実演芸術は「時空に懸ける」表現であることが最大の特徴です。
それは同時に、「資金が欠ける」という経済・産業上の特徴にもつながっています。
実演芸術の魅力と価値を、人々がもっと享受できるよう
芸団協では様々な「橋を架ける」取り組みを進めています。

実演芸術の価値

表現は人間の証です。
人が演じ、語り、歌い、
奏で、舞い、踊る

生きた人間の身体表現である
芸術分野の総称を
「実演芸術」と言います。
絵画や美術工芸品、映像、建築などの
形のあるものと異なり、
人々と共有する
一瞬にすべてを「懸ける」芸術です。

その瞬間、その空間に懸けるからこそ、
強く惹きつけられるものがあります。
そのエネルギーや、
表現される世界にふれたとき
心揺さぶられ、
不思議と湧きあがってくる
力や共感があります。

実演家と観客、参加者が時間と
空間をともにすることは、
人々をつなげ、絆を深める
はたらきもあります。

コミュニティや地域社会では、
祭りや芸能をとおして、
神々、霊への祈り、自然への畏敬、
感謝をわかち合ってきました。

それは地域の
アイデンティティや誇りとなり、
国のイメージを形成して、
人々を惹きつけ、
観光や国際交流を促します。

実演芸術から生み出される作品は、
他の産業への刺激やヒントとなり、
社会の創造力を高め、
経済的な活力にもつながっています。

実演芸術には
数えきれないほどの
魅力と価値
が内包されています。

実演芸術の課題

実演家と観客とが、
ライブで時間と空間を
共有する
実演芸術は、
客席も公演数も自ずと限られます。
そのため、入場料収入が限られるという
産業上の特徴があり、
常に資金が欠け
経済的な困難が伴います。

地域によって、
実演芸術を享受できる機会に偏りがあり
この国に暮らす人々に、
その恩恵が行き届いていないのが現状です。

また芸術がもたらすその恩恵は、
数値で表しにくい、
というジレンマも抱えており、
欧米や韓国に比べ、
支援する予算や仕組みが不十分です。

実演芸術の多様な価値と、
産業上の特徴について
社会的な共通理解が十分に醸成されず、
結果として、担い手が不足し、
さらに享受機会が減る
という負の連鎖が起こっています。

芸団協の取り組み

芸団協は、
正式名称を
日本芸能実演家団体協議会といい、
日本の様々なジャンルの実演家組織や、
スタッフ団体が
分野を超えて68団体も集う、
世界でもめずらしい組織です。

1965年の発足以来、
実演芸術に共通する特徴と課題をとらえ、
実演家の活動を支援し、
その価値を社会に広げ、
豊かな文化環境を育むため、
様々な「橋を架ける」
取り組みを行っています。

実演家と人々をつなげる橋。
分野を超えて担い手をつなげる橋。
課題から政策などの提言へつなげる橋。

個々の団体では難しい取り組みを、
連携によって推進力に変える。

人々がより
心豊かに暮らせる社会の実現を目指して、
芸団協は今、
3つのプロジェクトに取り組んでいます。

写真提供元:東京バレエ団「ボレロ」撮影者:松橋晶子/公益財団法人東京フィルハーモニー交響楽団 撮影者:上野隆文/一般社団法人現代舞踊協会『水廻(みずめぐる)~Water circle~』撮影者:池上直哉/一般社団法人日本フラメンコ協会/公益社団法人能楽協会/日本舞踊・落語 撮影者:武藤奈緒美